てんかん
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てんかん(癲癇、Epilepsy)とは、脳細胞のネットワークに起きる異常な発火(以下、てんかん放電)のためてんかん発作を来す疾患あるいは症状である。WHO国際疾病分類第10版(ICD-10)ではG40。
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概要
てんかんは古くから存在する疾患のひとつで、古くはソクラテスやユリウス・カエサルが発病した記録が残っている。また、昔は「子供の病気」とされていたが、近年の調査研究で、老若男女関係なく発症する可能性があるとの見解も示され、80歳を過ぎてから発病した報告例もある。
てんかんの症状として、昔から「てんかん=突然倒れて、泡を吹く病気」とされてきたが、近年の研究の成果により必ずしも「てんかん=突然倒れて、泡を吹く病気」でないことが判ったが、啓蒙活動が足りないせいなのか偏見によるものか定かではないが、未だに「てんかん=突然倒れて、泡を吹く病気」と認識している人が多い。
てんかん発作に伴う主な症状は、強直性、間代性などの不随意運動、つまり痙攣(けいれん)であるが、痙攣を伴わない発作もある。また、意識障害として突然意識を失う・記憶が飛ぶ・急に活動が止まって昏倒する場合もある。ただし、大半の発作は一過性であり、数分~十数分程度で回復するのが一般的である。
発作に拠って影響を受ける部分は、主に意識と随意運動で、呼吸や瞬き・瞳孔反射といった通常の場合における不随意運動はあまり影響されない。
疾患の原因は脳の損傷や神経の異常とみられているが、多種多様な誘因があるとされ、根本的な原因を特定するのは難しい。また、発作症状については一人一人異なるため、似た症状の方はいても全く同じ発作症状の方は無に等しい程多種多様であるため、治療も患者数分ある程難しい疾患である。
病状と対応
てんかんは特に全般発作時の激しい全身の痙攣から、医学的な知識がない時代には狐憑きなどに代表される憑き物が憑依したと誤認され、近代においても痙攣の激しさから対処法を知らぬ者で、患者が困惑させたり、時に周囲がパニックを起す事もあり差別の対象と解する者がいるのも否めない。
発作時にはこれといった応急処置はなく、患者が暴れて段差から落ちたり壁などに体をぶつけて怪我をしない様に、周囲の者が安全確保をすることが必要となる。余裕があるようなら、発作時の症状を観察しておくと治療に役立つことがある。発作が断続的に持続する場合(5分以上)にのみ、救急車を要請する。
強直性の発作時には口の中や舌を噛んでしまう事があるため、以前はマウスピースとして清潔なハンカチを巻いた鉛筆や箸を噛ませるように指導されていた時代もあった。しかし現在では、鉛筆や箸で口内や歯を損傷したり処置者が受傷する等の危険もある上、極稀に「発作時嘔吐する場合もあり、ハンカチを巻いた鉛筆や箸を噛ませた事により、嘔吐物が気管に詰り窒息する危険性がある」ので、絶対に避けるように指導されている。
かつてはロボトミー等の外科的な手法に拠る治療も試みられたが、現在では大半が投薬により症状を抑える事が可能で、余程重篤な場合を除き、外科的な処置が行われる事は無い。また、脳ペースメーカーによる深度てんかんの治療も行われつつある。
薬物療法
現在日本で使われるてんかんの薬には、
- カルバマゼピン(CBZ)(テグレトール®)
- フェニトイン(PHT)(アレビアチン®)
- バルプロ酸ナトリウム(valproic acid;VPA)(デパケン®, デパケン®R(デパケンの徐放剤), バレリン®)
- ゾニサミド(ZNS)(エクセグラン®)
- クロナゼパム(CZP)(リボトリール®)
- ジアゼパム(DZP、DAP)(ホリゾン®、セルシン®)
- フェノバルビタール(PB)(フェノバール®)
- クロバザム(CLB)(マイスタン®)
- プリミドン(PRM)(マイソリン®)
- スルチアム(SL)(オスポロット®)
- アセタゾラミド(AZA)(ダイアモックス®)
- ニトラゼパム(NZP)(ベンザリン®)
- エトサクシミド(ザロンチン®)
- ガバペンチン(Gabapentin)(ガバペン®)【国内最新薬:2006年9月25日より発売】
などがある。
てんかんの治療目的は重積発作などの緊急性のてんかんからの回復、慢性てんかんの再発の防止である。
- 緊急時の薬物療法
緊急時は呼吸抑制に注意しながらジアゼパムを、血圧の低下に注意しながらフェニトインをゆっくり静注する。
- 慢性期の薬物治療
原則として単剤投与でコントロールする。使用薬剤はてんかんの型によって異なる。傾向としては、バルプロ酸が全般発作向きであり、カルバマゼピン部分発作向きである。
- 単純部分発作:フェニトイン、カルバマゼピン
- 複雑発作:カルバマゼピン、フェニトイン
- 強直間代発作(全般発作):バルプロ酸、フェニトイン、フェノバルビタール
- 失神発作:バルプロ酸、エトスクシミド
- WEST症候群:ACTH、バルプロ酸、ニトラゼパム
てんかん発作の分類
てんかん発作は異常発火の起きた部位や、広がり方によって異なる症状を示す。発作の起こり始め(起始)における異常発火の広がりによって大きく全般発作と部分発作の2つに分類される。
全般発作
発作の起始から大脳皮質全域にわたる発火の場合を全般発作と呼ぶ。全身の痙攣を引き起こす全般性強直間代発作(いわゆる大発作)や、意識消失が主体でけいれんを伴わない欠神発作が含まれる。他に汎ミオクロニー発作、強直発作、脱力発作などが含まれる。
部分発作
脳の一部のみで発火が始まる場合を部分発作と呼ぶ。さらに、意識障害を伴わないものを単純部分発作、意識障害を伴うものを複雑部分発作と呼ぶ。なお、発作の起始には脳の一部から発火が始まり、その後発火が大脳皮質全域に広がる場合を二次性全般化発作と呼ぶ。二次性全般化発作はいわゆる大発作と類似の症状を呈するが、発作初期の発火様式から部分発作に分類される。
- 側頭葉内側の発火の場合などには、意識がないままに単純な動作を続ける自動症と呼ばれる現象がみられることがある(ただし、自動症は部分発作には限らない)。
てんかん発作と非てんかん発作
てんかん発作と紛らわしい非てんかん発作(疑似発作)があります。
てんかん発作の誘因
- 光刺激: 1946年に W. Grey Walter によって科学雑誌『Nature』で発表され、1秒間に 20-50 回程度の光の明滅で発生する。1997年にテレビの子供向けアニメーション番組『ポケットモンスター』の放送中に激しい光の明滅効果により、多くの学童が発作を起こし社会問題に発展した。外部リンク: [1] 詳細はポケモンショックを参照。
- 過呼吸
- 睡眠不足
- 発作が起るのでは等の精神的不安感
- 他者の発作を見て誘発
- 過度の疲労
仕事以外にも、スポーツを行った事により起こす事もある。
- 環境の変化
転校やクラス替えによる環境変化、勤務先での異動や仕事の内容など変化、旅行や電車・車移動における環境変化など他人の目からみれば些細な事でさえ発作を起こす場合がある。
「脳波検査などで以下の誘因を使い誘発させあえて発作時の脳波を測定する場合もある」
- 光刺激→測定中ストロボを点滅させる。
- 睡眠不足→検査前日位から当日までの睡眠時間を少ない状態にする。
- 過呼吸→検査中に必要以上の深呼吸をさせる。
てんかんの種類
てんかんには多くの種類があり、種類によっては知的障害などの後遺症を残す場合もある。養護学校などでは、てんかんの危険性がある児童生徒にはヘッドギアを付けている。点頭てんかんでは「ヒプスアリスミア」と呼ばれる乱雑な脳波がある。
以下、てんかんおよびてんかん症候群の国際分類を示す:
- 局在関連てんかん
- 特発性
- ローランドてんかん
- 後頭部に突発波をもつ小児てんかん
- 症候性
- 側頭葉てんかん
- 前頭葉てんかん
- 頭頂葉てんかん
- 後頭葉てんかん
- コシェフニコフ症候群
- 特発性
- 全般てんかん
- 特発性
- 良性家族性新生児けいれん
- 良性新生児けいれん
- 乳児良性ミオクロニーてんかん
- 小児欠神てんかん(ピクノレプシー)
- 若年欠神てんかん
- 若年ミオクロニーてんかん(衝撃小発作)
- 覚醒時大発作てんかん
- 上記以外の全般性特発てんかん
- 潜因性・症候性
- 点頭てんかん(ウェスト症候群)
- レンノックス(レノックス)・ガストー症候群
- ミオクロニー・失立発作てんかん
- ミオクロニー欠神てんかん
- 症候群
- 早期ミオクロニー脳症(EME)
- サプレッションバーストを伴う早期乳児てんかん脳症
- 多数の疾病状態を合併する可能性があるてんかん発作
- 特発性
- 焦点性か全般性か不明なてんかん
- 全般性・焦点性発作の両方をもつもの
- 新生児発作
- 乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)
- 徐波睡眠期に持続性棘徐波を示すてんかん
- 後天性てんかん性失語(Landau-Kleffner症候群)
- 明白な全般性あるいは焦点性の特徴を欠くてんかん
- 全般性・焦点性発作の両方をもつもの
- 特殊症候群
- 状況関連性発作(機会性発作)
- 熱性けいれん
- 単独発作あるいは単発のてんかん重積症
- 急性代謝障害あるいは急性中毒の時に起こる発作
- 状況関連性発作(機会性発作)
てんかんであったとされる著名人
- フョードル・ドストエフスキー(作家)
- ナポレオン・ボナパルト(軍人、政治家)*夜中に短時間しか眠らなかったという有名なエピソードは、睡眠中に発作を起こすため、連続した睡眠が得られなかったことに起因している。
その他の人物についてはen:List_of_people_with_epilepsyを参照のこと。
関連項目
- 小児科学
- 神経学
- チェーザレ・ロンブローゾ - 主著『天才論』(L'uomo di Genio; 1888年)の中でカエサルやムハンマド、ナポレオンなど多数の歴史的偉人に癲癇の症状があったことを指摘し、天才と癲癇との関連性を説いた。
- ナルコレプシー
てんかんを取り扱った作品
- 『BRAIN VALLEY』(瀬名秀明) - てんかんがテーマではないが、非常に重要な要素として登場した
- 『静かな生活』(大江健三郎)-作者が、自分の息子(大江光)をモデルとして書いた。伊丹十三により映画化もされている。
- 『無人警察』(筒井康隆)-短編集『にぎやかな未来』(角川文庫)に収録されている「文明批判」がテーマの短編SF小説。自動車を運転しているてんかん患者の脳波を検知する『ロボット警官』が作中に登場する。1993年、この作品が角川書店発行の高校国語の教科書に収録され、『日本てんかん協会』から同作品の削除もしくは他の作品に差し替えるよう抗議され、作者の筒井康隆は『日本てんかん協会』と数度交渉したが双方の主張は平行線を辿り、結局筒井康隆は『断筆宣言』を発表し、全ての執筆活動を停止したが、1996年末『自主規制撤廃に関する覚書』をいくつかの出版社と締結して断筆を解除した。
外部リンク
- 日本てんかん学会
- 日本てんかん協会
- JEPNETてんかんネットワーク
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