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戦術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

戦術(せんじゅつ tactics)とは、作戦・戦闘において、状況に応じて目標を達成するために部隊・物資を運用する技術・方策である。そこから派生して競技・または何等かの競争(経済・経営、討論・交渉といった、他と競い合うもの)のように、困難や障害に対して挑戦するに際し、実際の行動を決定する計画、またはその計画に沿って行われる行動を指すようにもなる。

目次

  • 1 概要
  • 2 概念
  • 3 歴史
  • 4 戦闘力の基本要素
  • 5 陸上戦闘の戦術
    • 5.1 発見
    • 5.2 攻撃
    • 5.3 防御
    • 5.4 後退行動
  • 6 海戦術
    • 6.1 展開・索敵
    • 6.2 攻撃・防御
  • 7 歴史に見られる戦術
  • 8 軍事以外の戦術
    • 8.1 政治における戦術
    • 8.2 経済史における戦術
  • 9 参考文献
  • 10 関連項目

概要

戦術は局地における作戦戦闘の目標を達成する術策をいう。戦術単位である大隊、戦闘団・戦隊、駆逐隊等・飛行団などがこの戦術に基づいて運用され、士気・結束が最も組織的に強固であり、指揮官の下で独自的に戦闘が遂行可能な最小の単位である戦闘単位の中隊・軍艦・航空機がこれに準ずる。今日的な戦術と戦略の概念は、戦争を科学的に分析した19世紀の軍事思想家、クラウゼヴィッツによって明確に分類されたのが始まりとされる。陸海空軍において戦術はその戦闘の性格的な差異から同じ用語でもその内容が大きく異なる。

概念

戦術は戦略と混合されることもあるが、戦術の指針となり、より大局的な視点で主体の根本的な目標設定やさまざまな政策の整合性などを調整した巨視的な計画が戦略である。戦略上の都合によって採りうる戦術に制約が生まれたり、戦術の結果(勝敗、戦闘被害など)によって戦略の修正が必要となるなど、両者は構造上相互に影響しあうが、戦術に対する高次の概念が戦略であり、これらは厳格に区別されるべきものである。また、必ずしも戦術と戦略の2つだけに分かれるものでもなく、視点の広さに応じてより多様なレベルが存在しうる。(例えば野球においては、個々の選手のプレイという戦術、選手起用のような一つの試合レベルでの戦略、先発ローテーションのようなペナントレースやトーナメント全体レベルでの戦略などが考えられる。)

軍事においては、戦略は国家戦略、軍事戦略、作戦戦略に構造化されている。(戦略を参照)戦術はこれら戦略を実現するために、作戦・戦闘における敵部隊の無力化や制圧などの目標を達成するために部隊や物資を運用・指導する技術である。戦略とはその性質が本質的に異なり、戦術は戦略とは異なる具体的・実践的な技術・科学である。戦略レベルに対応してそれぞれに戦術も構造化されており、指導する部隊規模によって「高等戦術」、「下等戦術」と呼んで区別する。

また柔軟性の高い基本的な戦術思想を「戦闘教義」いい、これに基づいた戦術実行の方策を「戦法」という。

歴史

戦術は歴史においてはその時代の武器・兵器の性能や組織体制、文化、戦争形態などによって非常に多様に変化している。 極めて初期に陸上戦闘の画期的な戦術として開発されたのがファランクスであると考えられている。槍と盾で武装した密集隊形の突撃の戦術論はその後レギオンとして再編され、投石器や騎兵などの新しい戦力が歩兵という伝統的な戦力に組み込まれ、その後のヨーロッパの戦術論に多大な影響を与えた。しかし、まだ中世ヨーロッパにおいては騎士による一騎打ちの儀式的な戦闘形態が根強く残っていた。しかし、小銃の発明から銃兵とこれまでの歩兵部隊を組み合わせたテルシオが開発され、そのテルシオの研究から三兵戦術が生まれた。銃器の発射準備時間の短縮や火力の増大が進むにつれてさらに個別に兵士を散開して配置する戦術が発展し、近代の二度にわたる世界大戦において、部隊の移動力の向上、武器兵器の火力増大によって機動戦術が重視されるようになり、米国海兵隊によって理論化された。これが現代の戦術論に受け継がれている。

戦闘力の基本要素

  • 打撃力:打撃力とは部隊全体の銃などの装備・武器の性能や突撃能力によって得られる敵部隊への攻撃能力である。武器の能力や弾薬量にも大きく影響され、直接的に敵戦力に損害を与えるだけではなく、機動力を減退させることにも貢献する。
  • 機動力:戦場における部隊(個人)の移動能力である。徒歩や車両などによって大きくその能力や性質は変化する。地位的な優位性を常に保ち続けるためには火力に裏付けられた効率的な機動が必要である。
  • 防御力:攻撃を受けた際に出る損害を最小化する能力である。装備や戦闘陣地の耐久性、部隊の初動の回避行動や迅速な反撃の能力などが影響する。戦場において特に重視すべき要素であり、特に築城などによる位置的な優位を得ることはよりよい防御を行うためには必須である。

陸上戦闘の戦術

陸上戦闘においては陸上戦力は一個人にまで細分化が可能であり、多様な用兵を行うことができるという特徴がある。歩兵、火砲、戦車、装甲車、航空機などはそれぞれが異なる長所短所を持っており、相互補完的に組織化され、部隊として編成されている。

近年戦術の基本思想は「機動戦」である。敵戦力を征圧、無力化するために、部隊を戦術的、位置的に優位な場所へ適切に移動させることであり、古代中国の戦略家であった孫子や近世欧州の戦略思想家であったクラウゼヴィッツなどによって論じられてきた戦術思想であるが、より大系的な機動戦を論じたのは米国海兵隊大将のグレイであると考えられている。機動戦の真髄は敵戦力の正面を攻撃することではなく、敵戦力を迂回、分断し、弱体化させることにある。(歩兵の戦術、戦闘#陸戦を参照)

発見

陸上戦闘では視界が大きく制限されることから、敵部隊の発見が非常に大きな問題となる。敵部隊を発見するために偵察・パトロールなどが行われる。パトロールとは敵の占領地における戦術行動であり、偵察、戦闘、追跡の三つの性格を持つ。作戦において非常に重要な行動である。実行される部隊の規模は射撃班のレベルから中隊レベルまでさまざまであるが、基本的にはパトロール隊を指揮統率する指揮チーム、目標地点まで部隊を誘導する誘導チーム、作戦行動中にさまざまな情報を収集、管理する監視チーム、戦闘における戦闘を行う戦闘・支援チームに区分され、運用される。

攻撃

攻撃は敵の破砕・撃破・制圧が可能な戦闘行動である。準備時間によって「応急攻撃」「周密攻撃」、形態によって「遭遇戦」「陣地攻撃」「戦果拡張」「追撃」、機動方式によって「迂回」「包囲」「突破」、時間によって「昼間」「夜間」「黎明」「薄暮」攻撃などに区分される。(攻撃を参照)

攻撃の最終段階としてしばしば突撃が行われる。突撃とは敵戦力を混乱状態に陥らせ、無力化・制圧することを目的として行う接近攻撃である。敵戦力が戦闘陣地、要塞、塹壕などの拠点に立て篭もってしまった場合は火力と位置的な優位だけでは敵戦力が後退行動をとるとは限らないために行われる攻撃である。

伏撃とは敵戦力に対して行う基本的な奇襲戦術であり、戦闘パトロールの一環でもある。伏撃を行う場合は偽装を施すことが最も重要なことであり、敵に事前に発見されることのないようにしなければならない。また、攻撃を行った場合、速やかに敵戦力を集中的に攻撃し、壊滅的な損害を与え、反撃や回避行動の余裕を一切与えてはならない。(待ち伏せを参照)

防御

防御は敵の攻撃を破砕し、時間的猶予を得ることが可能な戦闘行動である。形態によって「陣地防御」と「機動防御」がある。陣地防御は敵戦力が攻撃してくる前に地形を活用した部隊配備を行い、一部は築城を行い、銃座を設け、武器弾薬を準備しておき、敵戦力の攻撃を迎え撃つ防御である。また陣地防御において、位置的な優位を確保するために築城を行い、戦闘陣地を築くことは非常に重要である。陣地を構築すれば、兵士の身体を隠蔽、掩蔽し、より安全に戦闘を遂行することができる。この際に、戦闘陣地には敵の攻撃に耐えうる耐久性、兵士の全身を遮蔽する能力が必要である。さらに、同時にそれぞれの射撃地点を効果的に攻撃できるように、射撃区域を設定した上で設置しなければならない。機動防御とは固定的に部隊を配置するのではなく、敵戦力の不利な状況において適時適所に部隊を機動させて側面を攻撃し、敵の攻撃を妨害する防御である。(防御を参照)

後退行動

後退とは現状を改善、もしくは状況の悪化を阻止することを目的として後方に機動、または敵戦力から離れることである。後退行動は遅滞、離脱、離隔に三分されている。すなわち、戦力が充足していない場合に敵戦力を誘導する遅滞、陣地を修正して部隊を再配置する離脱、そして接敵していない部隊を後方へ移動させる離隔、である。(後退を参照)

海戦術

海戦術とは海戦における戦術であり、海上作戦では戦場が海洋(場合によっては河川・湖)という地形であり、そこで活動する戦力の最小単位は艦船となる。海上戦力すなわち艦船は通常それ自体が複合的な兵器を装備しており、陸上戦力ほどの多様な運用を行うことはできず、また厳格な指揮系統の維持が容易であるため陸上戦力よりも厳密に運用することができる。海上戦闘の戦術は陸戦のそれとは性質がやや異なり、戦場および戦場付近の地域における艦隊の隊形・配列・運動を指導する技術である。また海戦においてはまず戦術を実施する画策である「戦策」と呼び、そこで戦闘序列、隊形、使用速力、戦闘の原則、戦法、敵味方識別の手法、各部隊の戦闘任務、戦闘開始の各部隊の運動などを定める。(ここでは主に対水上戦闘について述べる。対潜戦闘、機雷戦などは海戦を参照)

展開・索敵

作戦部隊は概ね航空母艦あるいは巡航ミサイルを装備した大型の巡洋艦(時代によっては戦艦)を中心として巡洋艦、駆逐艦、フリゲート、潜水艦、掃海艇、航空機などで構成される。これらは対空・対艦・対潜能力を有機的に結合させうる航行序列で航行するように努め、また艦艇によって最高速力は異なるので陣形に乱れが生じないようように使用速力を統一する。また外洋に展開した部隊は洋上補給兵力である給油艦、給弾艦、工作艦などを通じて基地からの後方支援を受けて作戦行動を行う。

敵の現在位置を性格に探知する索敵は、現代においてはレーダー、人工衛星、航空機、潜水艦、陸地の情報機関、海底に設置されている音響探知センサーなどが大きく貢献している。索敵は洋上監視、哨戒、電子戦などによって行われる。索敵によって的確な戦術情報を多く収集して分析することで、初動の優位性を得ることができる。索敵能力の優劣は位置情報の有無に直接的に繋がるため、続く攻撃の成否に大きく関わる。航空母艦は航空機を搭載していることから一般的に索敵能力が極めて高く、かつ高度な打撃力を有している。

攻撃・防御

攻撃は基本的に奇襲がどのような場合でも望ましいとあらゆる海軍で考えられている。現代では電子戦技術とミサイルの発展で対艦攻撃能力は著しく高まっている。しかも敵の艦艇が本格的な戦闘態勢に入れば現代の艦艇の主要な防御システムであるECM、対空砲、迎撃ミサイルを掻い潜らなければいけなくなるため、攻撃が与えうる損害が減少してしまうためである。

防御については作戦部隊の編制や装備によって異なる。基本的に艦艇の防御は索敵能力(敵の索敵に対するステルス性や静粛性などの能力も含む)と上記の電子戦やミサイル戦能力及び損害が発生した場合の応急工作能力によって構成される。応急工作は損害コントロールであり、時間と共に悪化していく浸水被害や火災被害を最小化する作業である。

歴史に見られる戦術

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と云ったのはドイツの宰相オットー・フォン・ビスマルクであるが、戦史や政治史、経済史における戦術の記録は、今日でも様々な分野で様々な人に霊感を与え得るようである。

包囲攻撃 
包囲攻撃とは敵部隊の正面と一翼(可能であれば両翼)を同時に攻撃を加える方法である。しかし、包囲を試みる場合には地形や兵力の絶対量といった制約を受けるため、非常に難しい。包囲を試みたところ敵に包囲網を各個撃破されてしまい、逆に包囲攻撃を受けることになることも考えられるため実施には指揮官の用兵の能力が問われる。カンネーの戦いにおいてハンニバルはローマ軍に対して両翼を包囲し、撃破することに成功した。
正面攻撃 
正面攻撃とは敵部隊の正面を攻撃する方法である。会戦などにおいてしばしば用いられる攻撃方法であるが、その戦果は期待できず、被害が拡大する危険性が高い。正面攻撃を成功させるためには、圧倒的な火力が必要であり、そのためには大砲や迫撃砲、航空機、戦車を用いて敵戦力の正面と同時に後方も攻撃しなければいけない。
飽和攻撃 
敵戦力の対応能力を凌駕する戦力を投入する攻撃方法である。
人海戦術 
一般的に大量の兵員を用いた波状攻撃を意味する。密集隊形での突撃などを含めれば、古代より用いられてきた戦術であるが、近代においてもソ連軍や中国軍がこの戦術を用いたと考えられている。多くの場合は物量に依存した稚拙な戦術であると考えられている。(人海戦術を参照)
トロイの木馬 
トロイの木馬は架空の物語である神話と実際の戦史によって綴られたトロイア戦争において用いられた戦術とされ、その存在は単なる伝説なのか実史なのかで紛糾するが、この戦術に於いて、相手を欺いて内部に引き入れさせ、機を窺い敵の油断を付いた戦術として今日にも知られている。今日に於いてはコンピュータウイルスの一種としても知られているが、油断させて寝首をかくこのやり方は、様々な側面で利用(しばしば悪用)されている。
遊牧民の騎馬戦術 
紀元前15世紀頃、中央アジアの遊牧民の間で、それまで車を引く家畜であった馬に直接騎乗する技術が始まった。騎馬技術は家畜の管理に適用され、騎馬技術に熟達した牧民の集団を生み出した。彼らは牧畜経済を補完する騎馬狩猟を通じて騎馬弓射の技術にも磨きをかけたため、これが新しい戦術を生み出した。もともと弓矢のような射撃系、投擲系の武器は敵の攻撃可能圏の外側からの攻撃を志向するものであるが、これと騎馬技術が組み合わさったとき、恐るべき効果をもたらした。機動力に富んだ騎兵の集団は敵の兵力の弱点にすばやく結集して矢を射掛け、不利になるとすばやく撤退することができた。これは敵の手の届かないところから攻撃を仕掛けるという射撃武器の特性を著しく拡大するものであった。また、いったん撤退することで敵軍の追撃戦を誘導し、騎馬の移動速度によって敵軍の戦闘隊形の乱れを誘発させた後に反転、攻撃することも頻繁に行われた。こうして16世紀に火器が発達して騎馬弓射の優位を脅かすまで、遊牧民、あるいは遊牧民出身の熟練した騎兵集団はユーラシア大陸とアフリカ大陸においてもっとも有力な軍事組織として君臨し、多くの政権、王朝、国家の樹立に関与した。

軍事以外の戦術

戦術は競争的な性格を持つ政治、経済などの他分野においても概念が用いられている。しかし、軍事上の分類とは不整合である概念である場合がほとんどなので、混合しないように注意が要する。

政治における戦術

牛歩戦術 
牛歩戦術は、現代日本の政治史において、最も解釈の分かれる戦術である。これは国会決議において野党側の絶対的な不利をアピールしただけで、実質的には問題を先送りにするだけの単なる傍迷惑なだけで時間的資源を浪費するだけの自己満足に基くパフォーマンスであると見る向きと、強く・また長く粘る事で、国民に一党独裁状態が如何に民意を無視するかを印象付ける事に成功した(確固たる戦略に基いた)戦術であったと見る向きである。
海外では、多数派の横暴に対抗する手段として、好意的にみる向きが強い。
一方で日本の場合は、国会の会期が短く、さらに期限切れになると法案は廃案になるという2つの制度があるために、牛歩戦術がきわめて大きな影響力を持つ。後に野党の多くが同戦術以降、大幅に議員席獲得数を伸ばした訳だが、近年では余計に政治離れが進み、代表制民主主義の根幹に関わる状態に陥っている部分もある。

経済史における戦術

敵対的買収(企業乗っ取り)を仕掛けられた企業が取る防護策については、M&Aの項を参照のこと。

参考文献

  • 防衛大学校・防衛学研究会 『軍事学入門』かや書房
  • 眞邉正行『防衛用語辞典』国会刊行会
  • 石原莞爾 『戦術学要綱』 国防研究会(1985年)
  • 防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書 陸海軍年表 付 兵語・用語の解説』朝雲出版社
  • ジェイムズ・F・ダニガン、岡芳輝訳『新・戦争のテクノロジー』河出書房新社

関連項目

  • 戦争、戦略、作戦、戦闘
  • 歩兵の戦術
  • リデル・ハート
執筆の途中です この「戦術」は、軍事に関連した書きかけ項目です。この項目を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(関連: ウィキポータル 軍事/ウィキプロジェクト 軍事/ウィキプロジェクト 軍事史)
"http://ja.wikipedia.org../../../%E6%88%A6/%E8%A1%93/_/%E6%88%A6%E8%A1%93.html" より作成

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